知的財産権の基礎知識
平成23年不正競争防止法改正
平成23年5月31日に不正競争防止法の一部を改正する法律が成立しました。
法律改正の骨子は以下のとおりとなります。
今回の改正により,営業秘密侵害罪(不正競争防止法第21条1項)を被告事件とする刑事手続において,公開の法廷で明らかにされることにより事業活動に著しい支障を生ずる営業秘密については,申出により裁判所が秘匿決定(営業秘密の内容を法廷で明らかにしない旨の決定)をすることができることになりました(不正競争防止法第23条1項・3項)。
また,裁判所が上記秘匿決定をした場合,営業秘密の内容を特定させることとなる事項について呼称等を定めることができ,公開の法廷で営業秘密が明らかにならないような措置をとることができるようになりました(不正競争防止法第23条4項)。
さらに,裁判所が上記秘匿決定をした場合,一定の要件の下で,公判期日外で証人の尋問や被告人質問をすることができることになりました(不正競争防止法第26条1項)。
なお,裁判所による秘匿決定は申出を受けてされるものですので,自社の営業秘密を侵害したことを公訴事実とする被告事件において秘匿決定がされることが望ましいと考える場合には,弁護士と相談の上,適切な申出を行う必要があります。
今回の改正により,アクセスコントロール等を回避する機能以外の機能を有していたとしても,実質的にそれを回避するために用いられている場合を新たに規制対象に追加し,従来,アクセスコントロール機能以外の機能を有することを理由に規制を免れてきた装置を規制することができるようになりました。
またそれに加え,当該装置の提供行為に刑事罰(5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金これらの併科)を科すことができるようになりました。
改正以前の規制対象は,アクセスコントロールやコピーコントロールのような技術的制限手段を回避する機能のみを有する装置の提供行為とされており,それ以外の機能をも併せて有する装置については規制が及ばなかったため,容易に規制を免れることができるという弊害が生じていました。
今回の改正により,アクセスコントロール等の技術的制限手段を回避する機能を有する装置を,回避の用途に供するために提供する場合には不正競争防止法により厳しく規制されることとなりました。
自社の製品がアクセスコントロール等の技術的制限手段を回避する目的で製造されたものではない場合であっても,そのような機能を有する場合には不正競争防止法の規制対象であるとの指摘を受ける可能性が今後高まる可能性がありますので,適時自社製品が規制対象となるものであるかどうかのチェックを怠らないようにする必要があるといえます。
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