日比谷ステーション法律事務所 HIBIYA STATION LAW OFFICE

資金調達の基礎知識

裏口上場と上場廃止の概要(セラーテムテクノロジー事件を念頭に)

セラーテムテクノロジー事件

平成24年6月19日、大阪証券取引所は、株式会社セラーテムテクノロジー(以下本稿では「セラーテム社」といいます。)の上場廃止を決定し、その旨を公表しました。
大阪証券取引所がセラーテム社の上場廃止を決定した理由は二つあり、一つはセラーテム社の四半期財務諸表等に添付された四半期レビュー報告書において、公認会計士等によって「結論の表明をしない」旨が記載され、かつ、その影響が重大であると大阪証券取引所が認めたこと、もう一つは、公益又は投資者保護のため、大阪証券取引所が上場廃止を適当と認めたこととされています(大阪証券取引所ホームページ・ニュース参照)。
上記二つの理由のうちの後者については、セラーテム社及び同社代表取締役社長らが、同社の浮動株時価総額が過小で上場廃止基準に抵触するおそれがあったことから、株式交換により他の会社を子会社化し、株価の上昇を図ろうと目論んだものの、当該スキームがいわゆる「裏口上場」とみなされ、上場廃止基準に抵触することを危惧したため、セラーテム社が新たに調達する資金で当該他の会社を買収するスキームのように偽装し、虚偽の事実を平成21年11月13日に開示したこと、及び同事実に関して、セラーテム社が平成24年5月11日、平成21年11月13日に開示した子会社化及び第三者割当増資が実際は株式交換であったことを認め、平成24年6月15日、過年度の有価証券報告書等の訂正報告書を提出したことを実質的な内容としています。
当事務所では、上記セラーテム社によるスキームの偽装及びそれに関する有価証券報告書等の虚偽記載の一連の事実を「セラーテム事件」と呼んでいます。

裏口上場とは

セラーテムテクノロジー社の上場廃止の契機となり、また新聞記事やテレビニュース等でも聴くことのある「裏口上場」とはどのようなものなのでしょうか。
この「裏口上場」という言葉は法令に定義があるわけではありませんので、使われる文脈によって若干ニュアンスが異なる場合がありますが、一般的には、「裏口上場」とは、非上場会社が上場会社との間で合併や株式交換等を行うことにより上場会社の経営権を取得し、その上で当該上場会社に非上場会社の事業を移すことで、証券取引所による新規上場審査を免れて実質的に上場を果たしたのと同様の効果を生じさせることを指します。
上場会社と非上場会社とが合併を行う場合、規模の大きい上場会社が実質的な事業を継続することが多く、その場合には上場廃止基準との関係で特段の問題は生じません。
しかしながら、上場会社に比べ非上場会社の規模が圧倒的に大きな場合等、合併により上場会社の実質的存続性が失われ、非上場会社の事業のみが存続するような状況を念頭に置いた場合、実質的には上場審査を経ていない非上場会社が上場したのと同様の実態を生じさせ、他方では上場基準に適合した上場会社の実体が喪失することとなるため、そのような合併等は「不適当な合併等」あるいは「実質的存続性の喪失」という上場廃止基準に該当することとされています(東京証券取引所、大阪証券取引所の上場廃止基準参照)。

株式交換による裏口上場の方法

裏口上場の方法として代表的なものは非上場会社が上場会社と合併をする方法ですが、その他に「株式交換」を利用した裏口上場というものもあります。
「株式交換」とは、既存の株式会社(便宜上「A社」とします。)の株主(α)が有する全株式を他の株式会社(こちらは便宜上「B社」とします。)に移転し、A社がB社の100%子会社となり、A社の株主(α)はB社からB社株式が交付され、B社の株主となります。
A社が非上場会社、B社が上場会社の場合、非上場会社であるA社の株主(α)は株式交換の方法で実質的にB社の経営権を取得することが可能であり、経営権を取得した後にA社の事業をB社に移すことで裏口上場が可能となります。

株式交換による裏口上場の方法

裏口上場と法律上の責任

裏口上場は証券取引所の上場廃止基準に該当するものではありますが、会社法等の法律や情報開示・会計監査等が適切・適法に行われている限り必ずしも違法なものではありません。
しかしながら、有価証券届出書や有価証券報告書に虚偽記載を行う場合には、金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)の規制に抵触することとなり、虚偽記載に基づいて損害を被った株主等に対して損害を賠償する義務を負うこととなります。
セラーテム社は、株式交換スキームを「裏口上場」と評価されることを危惧し、それを避けるために有価証券届出書及び有価証券報告書等に虚偽の記載をしているため、金商法第21条の2の規定に基づき、当該虚偽の有価証券報告書等が縦覧に供されている間に同社の株式を取得した者に対して、損害賠償責任を負うものと考えられます(有価証券報告書等の虚偽記載等を理由とする株主損害賠償請求訴訟については、株主損害賠償請求訴訟相談サイトをご参照下さい。)。

セラーテム事件の無料法律相談を受け付けています

日比谷ステーション法律事務所ではセラーテム事件による被害株主(元株主の方を含みます。)の皆様からの無料法律相談を受け付けています。ご相談の際は電話番号 03-5293-1775 までお気軽にお電話下さい。

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