労働法務の基礎知識
セクハラによる精神障害の労災認定の基準変更の動向
労働省(現厚生労働省)は、労災請求事案の処理を直接行う全国の労働基準監督署が、精神障害等の労災請求事案を迅速・適正に処理するための判断のよりどころとして、「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(以下「判断指針」といいます。)を平成11年9月14日付けで都道府県労働基準局長宛てに通達しています。
判断指針の(別表1)「職場における心理的負荷評価表」においては、心理的負荷を生じる事象ごとに平均的な心理的負荷の強度を「I」「II」「III」に分類しています。「I」は日常的に経験する心理的負荷で一般的に問題とならない程度の心理的負荷であり、「III」は人生の中でまれに経験することもある心理的負荷であり、「II」はこれらの中間に位置する心理的負荷であるとされます。セクシュアルハラスメント(以下「セクハラ」といいます。)を受けたという事象は、一律に「II」に位置づけられていました。そして、かかる平均的な心理的負荷の強度を前提として、個別事案における具体的な事情により心理的負荷の強度の修正を加えた後の総合評価により当該労働者の職場における心理的負荷を「弱」「中」「強」と評価することとされていました。
しかし、セクハラの態様は様々であり、これによる心理的負荷の強度も、弱いものから強いものまで幅広く存在することが認識されています。そこで,厚生労働省の精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会が平成23年6月23日に公表した「セクシュアルハラスメント事案に係る分科会報告書」においては、セクハラを受けたことによる平均的な心理的負荷の強度を一律に「II」とするのではなく、下表のようにより具体的な事案に応じて評価を区分することを提案しています。今後、かかる提案が判断指針の内容に採用されるか注視する必要があります。
その出来事だけで心理的負荷の強度を「強」と判断できる「特別な出来事」 |
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「III」(強い心理的負荷)に修正するものの例 |
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「II」(中間的な心理的負荷)から修正しないものの例 |
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「I」(弱い心理的負荷)に修正するものの例 |
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